トイ・プードル 10才11ヶ月 男の子
歯のぐらつき、歯石が気になるとのことで来院されました。
診察では、重度の歯周病、多量の歯石が認められました。左上顎犬歯はぐらつきがひどく抜歯が必要と思われました。切歯はすでに4本抜けてなくなっていました。
麻酔下での歯科治療処置が必要と思われましたが、以前より咳をしているとのことでしたので、検査の後、まず咳の治療を開始し、状態を改善してから歯科処置を行うことにしました。
内科的な治療により咳の症状が改善したところで、歯科治療処置を行いました。
(術前検査として行った頭部レントゲンでは、歯槽骨の吸収像がいくつか認められました。)
初診時に抜歯が必要と思われた左上顎犬歯は、処置当日までに抜けてしまいました。
麻酔下での歯周プローブ検査の後、歯科レントゲン検査(口内法)、歯神経ブロック、通水テスト、スケーリング、ルートプレーニング・キュレッタージを行いました。
歯周プローブ検査
歯神経ブロック
通水テストでは、右上顎犬歯が口腔鼻腔ろうになっていることがわかりました。
通水テスト*
*通水テスト:歯周ポケットに生理食塩水を注入し、口腔鼻腔ろう*の有無を確認する検査です。
*口腔鼻腔ろう:上顎歯の歯肉炎によって上顎歯槽骨が吸収して鼻腔にまで達すると、口腔と鼻腔がつながって口腔鼻腔ろう(口鼻フィステル)となります。口腔鼻腔ろうができると、くしゃみ・鼻水・鼻出血・目やになどの症状がでてきます。根本的治療は、まず原因となる歯を抜歯することです。
スケーリング
ルートプレーニング・キュレッタージ
右上顎犬歯とその他のぐらつきのひどい歯(左上顎第2前臼歯など)を抜歯しました。
左上顎第2前臼歯は2根歯(歯の根元が2つに分かれている歯)なので、高速ハンドピースにより2本に分割して抜歯します。(○部分が2本に分割した歯です)
抜歯窩は生理食塩水できれいに洗浄し、犬歯の抜歯窩には抜歯創保護材を挿入してから縫合しました。
フッ素配合の研磨ペーストを使ってポリッシング
歯周ポケットの深い部分には歯科用軟膏を注入
処置前(右上顎)
処置後(右上顎)
処置前(右下顎)
処置後(右下顎)
処置前(左上顎)
処置後(左上顎)
処置前(左下顎)
処置後(左下顎)
退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。
退院後、帰ってからぐっすり眠り、起きてからは食欲もあり、よく食べている、口は気になるようだが出血やよだれはないとのことでした。
経過①:処置から8日後の来院時は、元気も食欲もあり、歯肉の炎症はかなり改善していました。縫合部分も問題なく、歯科用軟膏を再注入しました。
経過②:処置から15日後に来院、口を気にすることがとても減ったとのことでした。歯肉の炎症はなくなっており、縫合部分もきれいでした。下顎の犬歯のぐらつきはなくなり、歯周ポケットは浅くなっていました。
歯科用軟膏を再注入し、これからお口の中を健康に保っていただくため、歯みがきのしかたについてお伝えしました。
ご家庭での歯のお手入れ、がんばりましょう!