シーズー 15才1カ月 女の子
左アゴの下に何かグリグリしたものが触るとのことで来院されました。
診察では左下顎骨の後端部分が右側よりも隆起していることがわかり、後日あらためて詳しい検査をおこなうことになりました。
検査当日、隆起部分は少し大きくなっていました。
患部のFNA検査では多数の好中球とマクロファージが認められ、頭部のレントゲン検査で、左下顎第1後臼歯の歯槽骨で骨吸収像があり、歯根膿瘍・外歯ろうが疑われました。
また口腔内には多量の歯石・歯周病が認められたため、麻酔下での歯科治療処置を行うことになりました。
このワンちゃんは3年前に腎臓機能の低下がみられ、以降、腎臓病用の療法食を食べています。
今回の術前の血液検査でもBUN・クレアチニンの上昇がみられました。
安全な麻酔のため、しばらく皮下点滴に通っていただき、再度血液検査を行い、BUN・クレアチニンが下がっていることを確認した上で処置を行いました。
口腔内の状態を良くするため、事前に口腔内用のサプリメントと抗生物質をお渡しており、 処置当日、口臭はなくなり、左下顎の隆起部分はやや小さく軟らかくなっていました。
麻酔下での歯周プローブ検査を行い、歯神経ブロック後、スケーリング、ルートプレーニング・キュレッタージ、を行いました。
歯周プローブ検査
歯神経ブロック
スケーリング
ルートプレーニング・キュレッタージ
レントゲン検査時に骨吸収が認められた左下顎第1後臼歯は内側に穴があいていることがわかりました。
歯周ポケットは8mmありました。
また、右上顎第3前臼歯もひどいぐらつきが認められたため、この2本の抜歯を行いました。
この2本の歯は2根歯(歯の根元が2本に分かれている歯)であるため、高速ハンドピースを用いて2本に分割してから抜歯します。(矢印が歯を分割した部分です)
抜歯
縫合
抜歯した左下顎第1後臼歯の写真です。
歯の外側
歯の内側(○が穴が開いていた部分です)
その後ポリッシングを行い、歯周ポケットが深かった部分には歯科用軟膏を注入しました。
ポリッシング
歯科用軟膏の注入
処置前(右上顎)
処置後(右上顎)
処置前(右下顎)
処置後(右下顎)
処置前(左上顎)
処置後(左上顎)
処置前(左下顎)
処置後(左下顎)
退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。
病院では興奮して食べてくれませんでしたが、退院後はすぐにフードを食べてくれたそうです。
経過①:処置から7日後に来院されました。歯肉の炎症は治まっており、縫合部分も問題ありませんでした。歯周ポケットは浅くなっていました。
元気も食欲もあり、飼い主さんから「こんなに歯が真っ白でピカピカになってとてもうれしい。
私も先生にしてもらいたいくらいです!」とおっしゃっていただきました。
歯科用軟膏の再注入を行い、これからお口の中を健康に保っていただくため、歯みがきの仕方についてお話ししました。
経過②:さらに2週間後の検診時、ご自宅での歯みがきをがんばっていますとのことで、歯はとてもきれいでよく磨けていることがわかりました。
ご家庭での歯のお手入れ、がんばりましょう!