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歯科症例28

Mix(ミニチュア・シュナウザー×ポメラニアン) 5才 11ヶ月 女の子

左目の下が腫れているとのことで来院されました。
他院にて抗生物質を処方され飲ませていたが改善せず、一度、腫れているところが破れて出血したこともあるとのことでした。
診察では左目下に外歯ろう*、口腔内には重度の歯周病が認められました。

*外歯ろう:根尖(歯の根元の先端)周囲に膿がたまると、その膿を排出するため管が作られます。その出口が口腔外の皮膚に出来た場合を外歯ろうといいます。多くの場合で目の下の腫れや皮膚の自潰がみられます。目の下の外歯ろうの多くは、上顎第4前臼歯の根尖周囲膿瘍により起こります。

麻酔下での歯科治療を行うに当たり、術前には検査を行い、当日までの口腔内の状態を少しでも良くするため、口腔内用のサプリメントと抗生物質をお渡ししました。
処置当日までに、目の下の腫れや口臭・歯肉の炎症は改善していました。
処置当日、麻酔下での歯周プローブ検査で、左上顎第4前臼歯のポケットは2mmと深くありませんでしたが、レントゲン検査では歯根の骨吸収像が認められました。

歯周プローブ検査

歯神経ブロック後、まずスケーリングにより歯石を取り除いたところ、左上顎第4前臼歯が破折・露髄していたことがわかりました。そこから感染を起こして根尖周囲膿瘍に進行し、外歯ろうが形成され目の下が腫れたと考えられます。

歯神経ブロック

スケーリング

ルートプレーニング・キュレッタージ

破折・露髄していた左上顎第4前臼歯

 

左上顎第4前臼歯の抜歯を行うことになりました。この歯は3根歯(歯の根元が3本に分かれている歯)であるため、高速ハンドピースを用い3本に分割してから抜歯します。抜歯後は抜歯窩を生理食塩水で洗浄後、歯科用抗生物質製剤を挿入し、縫合しました。

歯を3本に分割

抜歯後洗浄

歯科用抗生物質製剤の挿入

縫合

*痛みの大きい処置でも、術前からの鎮痛剤の投与や歯神経ブロック(局所麻酔)によって、吸入麻酔濃度をより低く維持することができます。

右下顎には乳歯の犬歯が残ったままだったため、咬合異常が起きていました。
永久歯の犬歯は正しい方向に生えず、上顎右の犬歯は後方に、左の犬歯は前方に、下顎の犬歯は内側に向いていました。
乳歯が抜けないまま永久歯が生えた場合、そのままにしておくと永久歯の噛み合わせや歯並びが悪くなり、口内炎や歯周病の原因になります。

抜歯前

乳歯の抜歯後

フッ素配合の歯科研磨ペーストを使ってポリッシングを行い、歯周ポケットの深かった部分には歯科用軟膏を注入しました。

ポリッシング

歯科用軟膏の注入

処置前(右上顎)

処置後(右上顎)

処置前(右下顎)

処置後(右下顎)

処置前(左上顎)

処置後(左上顎)

処置前(左下顎)

処置後(左下顎)

処置翌日の朝には、顔の腫れもなく、元気も食欲もあり、退院となりました。
退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。退院後も元気で、口を痛がることはなかったそうです。

経過:処置から8日後に来院されました。元気も食欲もしっかりあり、スムーズに食べているとのことでした。
犬歯部分の歯周ポケットは浅くなっており、歯肉の炎症は治まっていました。
歯科用軟膏を再注入し、これからお口の中を健康に保っていただくため、歯みがきの仕方についてお伝えしました。

ご家庭での歯のお手入れ、がんばりましょう!