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歯科症例24

ミニチュア・ダックスフンド 12才8ヶ月 女の子

クシャミ・逆クシャミ・黄色い鼻水・目の下の腫れ・夜中に鼻を鳴らして息苦しそうになることがあるとのことで来院されました。
このわんちゃんは8ヶ月前に他院で歯科治療処置を受けていましたが、すでに歯石が多く見られ、ほとんどの歯肉に歯周病が認められました。
とくに左右の上顎第4前臼歯部分の歯肉は化膿・炎症がひどく、触ると簡単に出血する状態でした。
麻酔下での歯科治療を行うにあたり、術前検査の後、当日までの口腔内の状態を少しでもよくするため口腔内用のサプリメントと抗生物質をお渡ししました。
処置当日までには口の臭いやクシャミはずいぶんましになっていました。
処置当日、全身麻酔下での歯周プローブ検査では、上顎犬歯の内側のポケットは左右とも20mm以上でとても深いことがわかりました。
歯神経ブロック後、スケーリング、ルートプレーニング・キュレッタージを行い、ぐらつきのひどい歯・吸収病巣が認められた歯(計6本)を抜歯・縫合しました。
専用の研磨剤を用いてポリッシングし、特にポケットの深かった部分には歯科用軟膏を注入しました。

歯周プローブ検査

歯神経ブロック

スケーリング

ルートプレーニング・キュレッタージ

 

上顎第4前臼歯は三根歯(歯の根元が3本に分かれている歯)であるため、高速ハンドピースにて歯を分割して抜歯しました。

 

抜歯窩は生理食塩水できれいに洗い流します。

 

犬歯部分は口腔鼻腔ろう(こうくうびくうろう)になっていたため、抜歯後は十分に鼻腔ろう内を洗浄し、抜歯窩には抜歯創用保護材を充填しました。歯肉の辺縁は状態が悪くなっていたため切除し、健康な歯肉で抜歯窩を被い、縫合しました。

 

縫合後

 

*口腔鼻腔ろう:上顎歯の歯肉炎によって上顎歯槽骨が吸収して鼻腔にまで達すると、口腔と鼻腔がつながって口腔鼻腔ろう(口鼻フィステル)となります。口腔鼻腔ろうができると、くしゃみ・鼻水・鼻出血・目やになどの症状がでてきます。根本的治療は、まず原因となる歯を抜歯することです。

ポリッシング

 

歯科用軟膏の注入

 

処置前(右上顎)

 

処置後(右上顎)

 

処置前(右下顎)

 

処置後(右下顎)

 

処置前(左上顎)

 

処置後(左上顎)

 

処置前(左下顎)

 

処置後(左下顎)

 

処置翌日には元気にフードを食べ、退院となりました。
退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。

経過①:処置から8日後に来院されました。
とても食欲があり、クシャミや鼻水はかなり少なくなったとのことでした。
歯科用軟膏を再注入しました。
歯肉の炎症はかなり治まっていましたので、これからお口の中を健康に保っていただくため、歯みがきの仕方についてお伝えしました。
(歯肉に炎症がある状態で歯みがきをすると、痛みのため、歯みがきを嫌がるようになる場合があります。)
経過②:さらに一週間後(処置から15日目)の来院では、クシャミはなくなり、鼻水も減り黄色い鼻水は出なくなっている、口の臭いは全くなし、
朝までよく眠れるようになったとのことでした。歯科用軟膏を再注入しました。
ご家庭での歯のお手入れ、がんばりましょう!